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第31回:前に詰める時の球の打ち方

 今回は久々にリクエストを頂きました(MHさん有り難うございました)。その内容は
『相手の球が短くなり、それを利用して前に詰める時、失敗が多いがどうすれば良いか?』
というもの。確かに、相手の球が短くなって『チャンス到来!』と勢い込んだらミス…というのは良くあるパターンです。
 今回は、久々に『物理』の話が交じってきます。なるべくそこをパスしても話が通じるように作ってはみますが…うまくいくかなあ〜?

▼▼▼ここから物理▼▼▼
 『ベクトル』という言葉をご存知でしょうか? 高校の選択科目で物理を選択した方でもないと馴染みは薄いでしょうが、要するに『ある方向性を持った力を示す矢印』のことです。
 例えば、カーリングでストーンを投げるとき、左から右に強い力で投げると、ストーンはかけた力のぶんだけ右に進みます。これより弱い力で投げれば、強い力の時より短い距離しか進みませんが、力を加える方向が同じならストーンは同じ方向に進みます。
 これらを言葉で説明するのは大変なので、物理学でも図を使って説明しますが、その図に描かれた『力をかける方向』と『力の強さ』を見やすく図案化した矢印が『ベクトル(図の青色の矢印)』と呼ばれるものです。
 上の図では、黄色いストーンのところに描かれたベクトルの方が赤のストーンのものより長い(=力が強い)ので、黄色いストーンの方が遠くまで進んでいます。
 ベクトルには、ある物体(この場合はストーン)に方向や強さの違う力を2つ以上加えた時、その複数の力をひとまとめにして、作図でストーンの進む方向や距離を求められるという便利な性質があります(ベクトルの合成)。また、それと逆の手順を踏むことにより、1つの力を2つ以上に分解することも出来ます(ベクトルの分解)。
 具体的に説明しましょう。ストーンを真っ直ぐ押し出した瞬間、誰かが間違えて横から蹴ってしまったとします。真っ直ぐ進もうとしたストーンは横から蹴られたことで横方向の力が加わり、斜め前方に進みます。2つの力を示すベクトルを使って平行四辺形を作り、その対角線を結べば合成されたベクトルが求められます。
 ベクトルの『合成』は常にプラスに働くだけでなく、マイナスの方向にも作用します。ストーンを左から右へ全力(10割の力)で押す時、同時に右から左へ2割の力で押し返したとすると、ストーンは10から2を引いた8割に相当する力で右へ進みます。逆に、全力で押すと同時に誰かに後ろから2割相当の力で押して貰えれば、12割の力のぶんだけストーンは右へ進みます。
▲▲▲ここまで物理▲▲▲

 さあ、ここからが本題です。
 『体重の乗ったショット』といった表現を聞いたことがあるでしょうか。前半の『物理』の話を読んでいなくても、自分の体が前へ進む勢いをうまく伝えられれば、普段の力以上の強いショットを打つことが出来るのは、何となく理解して頂けるかと思います。
 相手の短い球を打つ時、自分の身体はボールを追いかけて前方向に勢い良く動いているはずです。こんな時には、少しの力で打ったつもりでもどうしても身体の勢いがボールに伝わってしまい、思っているより強い打球になってしまいます(物理の話で説明したベクトルの合成)。前へ進んでいるので、相手コートエンドラインまでの距離は縮まっています。その上にさらに普段より強い球を打てば、当然アウトしやすくなってしまいます。図で見てわかるように、かなり抑えて打ったつもりでも大きくアウトすることがあるのはこのためです。
 さらに、相手の球が短かったのを慌てて拾いに行っているのだから、球を打つ高さはどうしてもネットより低い位置になりがちです。ネットに近い低い位置から強い球を打てば、より一層ネットしたりアウトしやすいのはわかりますね。

 こんな場合、塾長なら弱い球を打つことをお勧めします。
 もしうまく低くて強い球を打てたとしても、慌てて走りこんでいるためカウンターのロブを喰らいやすくなります。また、自分自身のポジションを確認したりスプリットジャンプを踏むなど、次のショットに備えて準備するには時間が必要ですが、速い球を打てば返球も早く帰って来るので、準備する時間が足りなくなります。
 こんな時に塾長なら、やや遅くて低くてほんの少し浅いショットで相手後衛につなぐようにします。球速が遅いので時間を稼げると同時に、球筋が低いので相手前衛にカットされた場合の脅威を減らすことが出来ます。また、ほんの少し浅くすることで相手の打ち気を誘い、ロブを打たせないようにします。但し、あまり浅いと相手に色々されてしまうので、そのサジ加減は難しいところです。
 いずれにせよ、前に詰める場合は自分の体重が乗ってしまう(ベクトルが加算される)ことを考慮して、強打ではなくコントロールショットで対応することです。勿論、足の速い方なら少しでも前で=高い打点で取るようにすれば、体重を乗せて思いっきりハードヒットすることも不可能ではありません。まずは高い打点で取ることを目標に走り、間に合わないと判断したらつなぎの球に切り替える、ぐらいでプレーしてみましょう。

2010.03.14 Copyright(C)しんのすけ


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