さてさて、今回は『アプローチショット』にいってみましょう。
長い間レッスンをしていると、生徒さんの色々な癖や、時には性格までわかってしまうものですが、このアプローチショットはなかでもかなり性格の現れやすいショットであるように思います。よく皆さんが思い違いをしているのが、
『アプローチショットを打ったら
即座にサービスラインまで詰めなくてはならない!』
というもの。ま、確かにそこまで詰められるようだと後の処理が楽になるのですが、深くて確実なアプローチショットを打ってさらに遅滞なくサービスラインまで詰めるという動作が、果たしてそんなに重要なのかな?と疑問に思う事しきり。
何故って?
…だって、ほとんどの生徒さんがアプローチショットを打つが速いかわき目も振らずに全速力で走り出して、サービスラインに届くと同時に『ビタッ!』と止まってしまうんだもの〜!(笑)
って笑っちゃいけませんが、もうホント、すごい勢いなんですよ。多分僕なら、サービスライン付近に1万円札でも落ちてない限り、そんなに早く走ったりしませんね〜。
ここで、基本に立ち戻って、アプローチショットとはどんなショットなのかを考え直してみましょう。
現代の攻撃的(とゆ〜か上級者以上の)硬式テニスでは、雁行陣はあまり主流ではありません。より攻撃力の高いフォーメーションである並行陣が主体であり、ゲームの中でいかに早く雁行陣から並行陣に移れるか?が勝敗を分ける事も珍しくありません。アプローチショットとは、サービスダッシュ→並行陣というパターンと双璧をなす、並行陣移行の為の重要なショットなのです。
当然のことながら対戦相手もその事を知っており、相手がアプローチを仕掛けにくいようにストロークを深く持っていったり、アプローチの球が甘くなれば即座に反撃を狙って来ます。アプローチを仕掛けた側はフォーメーションを変更している最中であり、こういう動きのある時にはどうしても隙が出来ているので、厳しい反撃にさらされ失点する危険性が増えます。(※例えば、アプローチを仕掛けた側がストレートにロブで切り返されると、雁行陣のままで打たれた時よりも対応が難しくなりますよね。)
反撃を防ぐ為には、『良いアプローチ』を打つ必要があります。どういうアプローチが『良い』かというと、『反撃を受けにくい=良いアプローチ』という事です。
…そのまんまですね。もうちょっと具体的に考えてみましょう。こんな場合、相手にとってどんな球がアプローチして来る人の隙を突きやすいかという逆の視点で考えてみるとよくわかります。例えば切り返しのストレートロブについて言えば、バウンドが高く緩めの球はロブを上げやすいですね。次に、アプローチして来るプレーヤーの足元に沈める球も有効ですが、その為には球がフォアハンド側に来てくれた方がトップスピン回転をかけやすいので沈めやすくなります。バックハンド側に来た球は返すのが精一杯になりやすいのですが、あまりに難しい球だとロブで逃げたり一か八かの勝負に出てみたくもなるでしょう。
こう考えていくと、
- @バウンドが低い球である事
- Aフォアハンド側は避ける事
- Bあまり難しすぎる球はかえって予測不能な返球を招いてしまう事
などが見えてきます。勿論、相手のレベルや性格、コートサーフェイスの違い、サイドやポイント状況の違いなど様々な条件によって変わってきますが…。
この性質を踏まえていれば、例えば相手の正面に近い低めの球を使い、相手が回り込んでフォアで打つように仕向けてみるといった意表を突いた作戦も思いつくでしょう。(回り込みになるがフォアで打てるのでこちらの足元を狙って来る確率が高くコースが読みやすい。しかも姿勢が安定しないのであまり沈まない事も期待出来る。)
そろそろまとめましょう。以上の通り、アプローチショットはコントロールが非常に重要です。そうなると、『打つが速いか走り出し…』なんていういい加減な打ち方は奨められません。むしろじっくりと腰を据えて、コントロール良く狙わないと後が苦しくなります。いわゆる『自分で自分の首を絞めてしまう』事になりかねませんからね。また、アプローチショットには比較的球速の遅い(=前に詰めるのに時間的に余裕がある)、バウンドの低い球がお奨めという事になります。アプローチショットにスライス回転の球を多用するのもこれが理由でしょう。(但しシングルス等では素早く追い込む為やパスを打たれにくくする為に敢えてトップスピン回転を使う事もあります。)
具体的によくあるパターンを例にとってアプローチの実戦を考えてみましょう。
@ 雁行陣同士でラリーを続けていた時に、相手のストロークが短く(バウンドする位置がサービスライン付近)バックハンド寄りに来ました。
A スライスを使って低く、やや遅い球を相手の正面に向けて深くコントロールします。
B うまく打てた感触があったので、相手の陣形に注意しつつ相手が返球するタイミングを計りながら落ち着いて前進します。
C 相手の返球の方向にあわせて前に詰めながら丁寧にファーストボレーをします。
…こんなテンポであればさほど難しくありませんし、余裕があるのでミスも減らせるかも知れません。実際、慣れて来ると歩いているような速度で詰めても、サービスライン付近でファーストボレーに間に合うようになります。僕もレッスン中にデモンストレーションとしてやる事がありますが、…試合中はやめましょうね。早足か小走り程度でないとリズムが狂いますよ!