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第21回:飲み物による暑さ対策

 今年(2010年)の気候はどうも例年に増して異常な気がする。地球温暖化が叫ばれるようになって久しいが、それとも少し違うようで、年明けから現在に到るまで気温の乱高下が著しい。特にいわゆる『春』にあたる3〜4月は、平年気温を大きく下回り各地で遅い雪が降るほど寒い日があったかと思うと、その1〜2日後には逆に夏日が観測されるほど暑くなったり。感覚的には今年は『春』がなく、数日おきに『冬冬冬冬夏冬夏冬』と変化しているように思う。
 そんな中、5月も後半に入るとさすがにかなり暑い日が連続するようになって来た。しかし、日本に棲む生物の身体は、『冬→春→夏』という穏やかな変化の中で冬モードから夏モードに切り替えるように出来ているので、こう急に暑くなると身体がついて行かない。こういう時、無理な運動をするとこむら返りや肉離れを起こしやすい。
 今回は、ちょっと医学的な情報を交えつつ、この季節向けの飲み物による暑さ対策について考えてみたいと思う。
 但し、『塾長の言う通りにしたのに肉離れになったので慰謝料を寄越せ!』と言われても困る。塾長のところは『天下の回り物』であるはずの紙切れの巡回ルートから外れているため、とてもそんな余力はない。その点を踏まえて、あくまで参考として読んで頂きたい。

 『こむら返り』は、腓(こむら=ふくらはぎ)が痛みを伴う痙攣を起こした状態を言う。俗に『足がつった』という場合は大抵これである。一方『肉離れ』は、筋肉が急激かつ強く収縮し、部分的に損傷した状態を言う。『肉』が『離れる』と書くので、筋肉が骨から完全にはがれたりバラバラになった状態を想像してしまうが、『肉離れ』という時にはもっと局所的・軽度な症状を言い、筋肉のごく一部が切れたり筋肉を包む膜が部分的にはがれたような状態を言う。
 スポーツ中の怪我としては、この他に筋断裂(筋肉が完全に断裂した状態)や靭帯損傷(部分断裂や剥離)・靭帯断裂・骨折なども起こるが、これらは物理的にも相当強い衝撃を受けたことが原因となる場合が多く、固定物や他のプレーヤーへの衝突など、大抵事前に予防しにくい要因により引き起こされる。
 一方、こむら返りや肉離れ程度であれば、事前のストレッチと適度の水分補給などによりかなり防ぐことが出来る。特に、水分補給は手軽で誰にでも出来る一方、熱中症のような暑さに起因する他の症状をも予防することが出来るのでお勧めである。

 運動をすると身体の中ではエネルギーを消費するが、この時に熱が発生し体温を引き上げる。体温の異常な上昇は体力の消耗を招くので、身体は体温を下げようとして汗をかく。汗が蒸発する時の気化熱により体温を下げようとするのだが、純粋な水(H2O)を汗として出すことは出来ず、体液に含まれるナトリウム(いわゆる『塩分』)などのミネラルも同時に排出されてしまう。体内の水分量が不足した状態を『脱水(脱水症状)』と言うが、汗をかいている時には純粋に水(H2O)だけが不足することはなく、同時に塩分も足りなくなっている。
 脱水に陥ると、熱中症(高温が原因となる症状:熱失神・熱痙攣・熱疲労・熱射病)を引き起こすだけでなく、こむら返り等も起きやすくなると言われている。このため現在では運動中でもこまめに水分を摂るよう勧められているが、お茶や水などのミネラル分(特に塩分)の少ない飲み物だけを飲み続けると、水分は足りているのにミネラル分のみ不足することになり、低張性脱水や熱痙攣を引き起こしてしまう。
 水分とミネラルを同時に補うことの出来る飲み物として『スポーツドリンク』が市販されているが、一般商品としてのスポーツドリンクは、それを日常的に飲み続けることを考慮してか塩分を控え目にしたものが多い。また、糖分を多く含む商品は、運動中に飲むと糖分の処理にインシュリンを大量消費してしまい、結果的に運動能力を落としてしまうことがある。
 以上のことから、塾長は一般的なスポーツドリンクを購入し、当日の暑さや予想運動量によって水で適宜薄めて濃度を調整し、更に塩分(塩化ナトリウムでも良いが、気分的な理由で海水精製塩)を少量加えたものを運動前に多目に(その日の体調により200〜500cc程度)飲むようにしている。参考までに言うと、濃度の目安は原液の70〜50%、塩は500ml当たりひとつまみ強(約1〜1.5g)程度。塩味をやや強く感じるものの、飲むのには支障がない程度の味を目安としている。
 この他、知っておくと便利なのが『経口補水液(けいこうほすいえき・ORS=Oral Rehydration Solution)』という液体。経口補水液は、熱中症などの場合に緊急に水分と塩分を補給する為の飲み物で、水に食塩とブドウ糖を溶かして作る。水1Lに対して砂糖大さじ4.5杯(約70g)・塩小さじ半分(約2.5g)を加えただけでも代用品(LGS=lobongur solution)が作れるので、軽度の熱中症患者相手なら症状緩和の為にその場で作って飲ませることもある。意外なところでは、味噌汁も塩分補給に適している。まあ、コートサイドで味噌汁をすする光景は何とも言い難いが、要するに水分と塩分をバランス良く摂取しなさいということだ。その上で叶うことなら糖分・クエン酸・その他電解質も補えば、夏場の強い運動にも体調を崩しにくくなる。

 医師から塩分摂取に関して特別な制限を受けている場合を除き、通常は一時的な塩分の過剰が医学的に問題になることは少ない。一方で熱中症は自覚症状が弱く、一歩間違えると重篤な状態に陥ることもある。それならば、強い運動の前には脱水やそれに伴う筋肉の痙攣・熱中症を防ぐ為に、十分な水分と塩分を補給しておくことが望ましいだろう。
 勿論、肉体的な損傷を防ぐ為には運動前後の十分なストレッチも欠かせない。寒い冬場と違って夏場はストレッチをサボり勝ちだが、特に運動前には水分&塩分の補給とストレッチを十分に行い、プレーの途中でも汗をかいた量に応じてこまめに水分&塩分を補給することが必要だ。これから9〜10月頃まで続く暑い季節を楽しく乗り切る為にも、肝に銘じてプレーに望んで頂きたい。


●●●参考外部リンク●●●
●Wikipedia●●経口補水塩●
●日本整形外科学会●●「スポーツ外傷の応急処置」●

2010.05.24  Copyright(C)しんのすけ


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