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第20回:質問に答えることの意義

 最近レッスンを引き受けているのは主婦層が殆どで、レッスンが終わってからの反省会(と言うか茶話会?)が結構盛り上がる。勿論、テニスの話ばかりではなく、昨日の夕飯のおかずがどうこう、漬物の漬け方がどうこう、韓流ドラマがどうこうといった話も多い。それはそれでなかなか楽しく、持ち寄ったお菓子を頂いたりしながら塾長も時々会話に参加している。
 それでも、必ず幾らかはテニスの話が出て、こういう場合のポジションはどうすれば良いか?とか、こんなプレーで良くミスをするのでどうすれば良いか?など、質問を受けている。
 机上の説明はなかなか難しいので、百均ショップで買ったホワイトボードにコート図を書き込み、生徒さんに貰ったマグネットをプレーヤーに見立てて配置し、時には身振り手振りも交えて説明しながら何とか理解して貰えるように工夫している。
 手前味噌で恐縮だが、果たしてこんなことに時間を割いているコーチが、巷間にどれだけ居るだろうか?
 昔、ある独善的なヘッドコーチの元でコーチしていた時のことである。レッスン終了後、塾長は生徒さんからその日の内容について質問を受けた。塾長自身テニススクールの生徒だった経験があるのだが、その際同じようにコーチに色々と質問し、教えて貰った時の喜びを鮮明に覚えていたので、それを思い出して一所懸命に説明をした。生徒さんにも納得して頂き、非常に満足してクラブハウスに戻って来ると、それを見ていたヘッドコーチが待っていてこう言った。
『オマエ、何しとんねん!』
どうやら怒っているようだが、何を怒られたのか見当もつかなかった塾長は、正直に何で怒られたのか尋ねた。
『オマエみたいなんがヘッドコーチの俺を差し置いて生徒に指導するゆうのはどうゆうこっちゃねん! 今度から何か聞かれても放っておけ! わからんかったらワシんとこにプライベートレッスン受けに来る(=別料金を支払う)かもわからんやろ!』
 その答は非常に衝撃的で、心の中で思わず『違う!!!!』と大声で叫んだが、そこはそれ、一応大人としての対応を知っていた塾長はグッと我慢して謝ることにした。しかし、したたか者のヘッドコーチはその逡巡を感じ取ったのか、更に反省文のレポート提出を命じてきた。やはり心の中で『アホか』と思いながらも、ヘッドコーチの自己顕示欲を満足させるような内容のレポートを創作して提出し、ようやくその話は終わった。
 ある意味、その時の経験が反面教師として塾長の記憶に強く残り、それによって今の『説明の時間を惜しまないスタイル』が出来たのかもしれない。もしもそうならその点だけは感謝しなくてはならないのだろうが、今思い出しても非常に不愉快な経験だった。
 レッスンをする上で、塾長は事前にその目的や意義を説明し、納得して貰ってから取り組んで貰うのを基本としている。セオリー(固定観念)の打破を目的とした練習など、先入観を排除すべき特別の事情がある場合を除き、事前説明で生徒さんに『次にやるべきこと』を知って貰ってからの方が、良い結果を生むと信じているからだ。
 自身がジュニア時代から選手だったり、ジュニアクラスのレッスンを多く経験しているコーチなどは、ジュニア向けのレッスンスタイル、つまり理屈や説明抜きにまず身体を動かし、文字通り身体で憶えこませるというスタイルを採る方が多い。そういうコーチはコート上で説明の時間を割くことを極端に嫌い、
『口を動かすヒマがあったら1球でも多く生徒さんに打たせろ!』
と言うことがある。なるほど、それも確かに一つの方法だと思うが、塾長はそれよりも事前の説明をシッカリした方が効率が良いと信じている。そのどちらかが絶対的に良い悪いという話ではない。生徒さんそれぞれが自分に合ったスタイルのコーチを見つけ、好きな方のコーチを選べば良いだけのこと。塾長の生徒さんの中にも、説明嫌いな方は居る。そういう方は自然と疎遠になり、自分の好きなスタイルのコーチの元へと走って行く。それはそれで仕方のないことだろう。
 さて、話を戻すが、レッスン終了後に質問に答えることの意義は何だろうか?
 レッスン中の説明に関しては、それを嫌うコーチの中に
『生徒さんはレッスンの「時間」にお金を払っているんだから、説明はその時間を無駄に消費してしまうので極力省いた方が良い』
という考えがあるのも事実。それはそれで確かに理に適っている。だが、レッスン終了後なら構わないのではないか?
 正直、レッスン終了後に1銭にもならない説明を喜んでするコーチは少ないかも知れない。しかし、それをすることで生徒さんの理解が深まり、上達速度が向上して
『あのコーチは良い』
と評判が立てば、そちらの方がむしろ営業面としてはプラスになるように思うのだが、どうも妙なところをケチッてしまうようで、レッスンが終わるとそそくさとクラブハウス奥に引っ込んでしまうコーチの方が多い。たまにはじっくり生徒さんと会話をし、生徒さんの意見や要望に耳を傾けることは、営業面でも、またコーチとしての技量向上にも役立つと、塾長は信じる。

 ちなみに塾長はこれらの目的の他に、料理上手なH高さんのキュウリの漬物(絶品!)や、旅行帰りの皆さんのお土産話なども楽しみにしている。話好きな大阪の妙齢女性が相手なので、切れ目のないマシンガントークに割って入ることは極めて困難であり、やり込められることも多いが、それもまた楽し、である。

2009.11.18  Copyright(C)しんのすけ


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