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第15回『Chinese Power』
今年の全英女子ダブルスでは、『ヤン(Zi Yan)・ツェン(Jie Zheng)※』の中国人ペアが優勝した。このペアは全豪でも優勝しており、今後も女子ダブルス界の『台風の目』になってゆくものと思われる。
さて、新聞紙上ではその活躍を見聞きしていたものの、女子ダブルスはTVで放映される機会も少なく、今回たまたまケーブルテレビで全英の試合を放映しているのを見る機会があり、ちょっと面白い事に気付いたのでコラムの俎上に載せてみたい。
彼女らの試合を見て思ったのは、戦術・戦略・技術ともに極めて
『オーソドックス』
だということだ。
ボルグ・コナーズらの世代からテニスを知る者としては、最近の(特に男子シングルスの)テニスは何とも物足りなく思える。まあこれは塾長の個人的な意見に過ぎないのだが、ベッカーから先、ビッグサーバー(強力なサーブを武器にするプレーヤー)ばかりが目立つようになり、昔ながらの『手に汗握る長い攻防(ラリー)』が少なくなって来ている。多少の揺れ戻しであろうか、最近でこそ少しはラリーが続くようになって来たが、それでもプレースタイルは強力なサーブを武器としたものが主流で、サーブを返球された時にのみラリーが続いているように思える。エドバーグのサーブ&ボレー・レンドルの強烈なトップスピンといった個性的なプレースタイルの付け入る余地はなくなったようで、何やら寂しくさえ思えていた。
ところが、かの中国人ペアのプレースタイルはどうだ?
相手のバックを突く。
前衛の頭の上をロブで抜く。
クロスへの返球は深く。
揺さぶりをかけて崩した隙を突く。
どれもこれも、『基本』とされる技術を極限まで磨いたものである。
昨今のテニス界全体の傾向として、先に述べたシングルスの傾向はダブルスにも及んでおり、戦術や技術は極限まで研究し尽くされたように見えていた。このために、通常の『基本的戦術』はもはや通用しないと思われたのか、打つべきコースの狭いダブルスでもセオリー無視は続き、何でもないクロスのストロークを相手前衛にいきなりぶつけてみたり、通常なら出られないと思える球をポーチしに行ったりと、
『裏の裏の裏をかく』
ようなテニスがまかり通っていた。
指導者の立場からすると大変苦々しいことで、実際レッスン中に無茶なプレーをする生徒さんを諌めようとしても
『全○で●●がやっていた』
『パンパシで▲▲が使うのを見た』
と言われると、そのたびにプロとアマチュアの違いやそのプレーの持つ意味を逐一説明し直さなければならず、説得するのに一苦労したものである。
そんな中、かの中国人ペアはアジア人らしい勤勉実直さ?を遺憾なく発揮し、基本的でオーソドックスなプレースタイルを究極まで突き詰めたように見える。また、それが世界で通用した事が、痛快でもあった。
塾長が考えるに、様々なバリエーションプレーと言うものは基本がしっかりとあるからこそ出来るものだと思う。そう思ってレッスンでもキッチリと基本通りのプレーを教え、このサイトでも解説をしてきた。しかし、現実のプロツアーでの『基本無視』の風潮の中で、
『本当にこれで良いのか?』
と少なからぬ疑問を抱いていたのも、正直なところ事実である。それが、基本通りのプレーで優勝したプレーヤーを目の当たりにした事で、ある意味正しかったと認められたように思えて嬉しかった。
既に結果の出ているビデオを見ているにも関わらず、勝利の瞬間には思わずガッツポーズを作り、心の中で快哉を叫んだ。
※文中で中国人ペアの氏名表記を『ヤン(Zi Yan)・ツェン(Jie Zheng)』としていますが、正確ではありません。例えばJie Zheng選手は中国語(出身地の四川省)読みでは『チー・チェン』に近い(?)発音をするようですが、そもそも発音体系が違うので日本語での表記は困難であり、TVやネット上など各方面でも混乱しているようです。漢字表記も一部で『鄭潔』とされていますが、中国語(簡易表記?)では『「咲」のつくり+おおざと さんずいへんに吉』と書くようです。この文字を使うとブラウザによっては文字化けを起こしますので、残念ながらどうやっても正確な表記が出来ません。このため、やむを得ず主に『中国人ペア』という表記を使用しました。
また、『アジア人らしい勤勉実直さ』という表記もありますが、西欧人の目から見て中国人・韓国/朝鮮人・日本人などが勤勉実直に見られている事実を一般論として述べただけであり、他意はありません。
…と、こんな説明まで事細かに書かないといけないのって、何だかヘン。
2006.08.25 Copyright(C)しんのすけ
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