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第11回:素人指導法の功罪
今回は、仲間同士で教え合う場合などによく見られる『誤った指導』に関して論じてみたい。前回に引き続き、『功罪』を論じた話になってしまう事をご容赦願う。
前回お話した通り、私はご近所付き合いで近くのコートに出向く事がある。最初は『これも何かの縁、この中から誰かレッスンを受けたいと言う人が出てくれれば…』という期待もあったのだが、残念ながら今までのところその気配はなさそうである。
でもまあ、こう言う『ご近所親睦テニス』に接するのも悪くはない。色々と新たな発見があり、今回のようにそれをネタにサイトの更新が出来てしまう事もあるのだ(笑)。
さて、今回の発見は、このグループの中でも明るくて盛り上げてくれる事では筆頭格の男性、O氏によって引き起こされた。(無断掲出なので匿名。でも別に個人攻撃をする訳ではありません。)
件のO氏、このグループに新しく参加したY氏とボレー&ボレーの練習中、こんな事を言っていた。
『あのね、1球1球、ちゃんとステップを踏んでボレーした方が練習になりますよ。』
けだし正論。…と思いきや、実はコレがとんでもない間違いなのである。
確かに、ボレーに限らず、ストロークでもスマッシュでも足の置き方(ステップ)は大変重要で、可能な限りきちんと練習を積まないとなかなか憶えられない。一方で、きちんと身についてしまえば、多少の厳しい球でもしっかりと返球する事が可能になる。ボレーの練習でステップを合わせるというのは確かに基本中の基本である。ところが、状況によってはこの練習は過酷なばかりでサッパリ身につかない事もあるのだ。それはどんな場合か?
前回のコラムでも申し上げた通り、『球が速い(速過ぎる)場合』である。
実戦でボレー&ボレーになるのは相当切羽詰った状況であり、球の速度も相当に速くなっている。その上、お互いに相手の嫌がるところを突いて来る訳だから、きちんとしたステップなど踏める時間的な余裕のある訳がない。そんな場合は、瞬間的に適切な面(ラケットの向き)を作り、打ち負けない位置で球を捕らえる、その事が一番重要になる。悠長にステップなど踏んでいては出遅れて打ち負けるのが関の山だ。
確かに、中〜上級者になれば、ボレー&ボレーでステップを踏む事も出来るようになる。勿論、球の速度をその練習に適した速度で安定させ、『ボレー&ボレーでステップを踏む練習』というシチュエーションを超えない範囲でコントロール出来るようになるからだ。そうでない場合は、球が荒れてしまい(方向と速度が不安定になる)、ステップどころではなくなり、むしろフォームを崩してしまいかねない。しかし、更に上達した上級〜セミプロクラスになれば、ノーステップでもボレー&ボレーが出来るようになるのだ。但し、そこまでなるには相当の鍛錬が必要であり、実力もないのにそこだけ真似しようとすると、途端にフォームを崩してしまう。
例外的に、初心者でもボレー&ボレーでステップの練習を出来る事もある。それは、コーチを相手にした時だ。私はこの手の練習が好きで、得意にしているのだが、この場合のコーチの技術は傍目にはちょっとわかりにくくて、その癖大変に難しい。初心者の球はどこに飛ぶかの予測が難しく、球速も毎回全然違う。そんな荒れ球の勢いを微妙な力加減でコントロールし、初心者がステップを踏める余裕のある速度、高さ、角度に抑え込んで返球する。丁度、野球で『名手』と呼ばれる内野手が難しい打球を事も無げに捌くのと同じ。それを同じく事も無げにやって見せるのが、コーチ業の醍醐味でもある。
しかし、仲間内ではこんな事も出来まいから、練習法としてはボレー&ボレーではなくストローク&ボレーをお奨めする。片方がストロークの位置に下がる事で時間的な余裕も出来、また実戦に近いシチュエーションでの練習が可能になる。これなら、ステップを踏んでいる間がありそうだ。
さて、ここまで功罪の『罪』の方ばかり取り上げてしまった。このままでは『個人攻撃ではない』といって無断で取り上げたO氏に申し訳が立たない。そこでここからは功罪の『功』の方を取り上げておこう。
当然ながら、功罪の『功』は『親睦』という事に他ならない。このグループではあくまで『親睦』の目的でテニスを楽しんでいるのである。特別難しい技術がいる訳でもなく、誰かを打ち負かす為の技術を求めてもいない。
元々、テニスにしても野球にしても、対戦形式のスポーツというものは『相手が嫌がるプレーをしないと勝てない』ものである。その辺が非対戦形式のスポーツ(ゴルフやボウリングなど)と違う点である。対戦形式のゲームで勝つと言う事は即ち対戦相手により多くの『嫌な思い』をさせたという事でもある。それで飯を食っているプロの連中はいざ知らず、『ご近所付き合い』の範囲で一方的に勝ち続けていては、あとで険悪なムードになったらどうするのだろう?と私などは常々思っている。
『スポーツマンシップ』という聞こえの良い言葉はあるが、人間の心理はそんなに簡単なものでもない。『手を抜く』のではないにせよ、適度に『調子を合わせる』事も必要な技術だと思っている。そんな中、たとえ多少の間違いはあっても、お互いに技術を磨きあう手助けをするという事は、こう言うグループでの付き合いにとっては大変重要な事だと思う。事実、このグループでもO氏の存在は重要で、O氏がいるだけでコートの中が明るくなるのも確かなのだ。先達が後進に道案内をする『美しい』光景が見られないのでは、心から打ち解ける事も難しかろう。その意味でも、実は大変微笑ましい思いで、その姿を見ていたのである。
皆さんも、これからも仲間同士で教えあい、研鑽する事を続けて頂きたい。
但し、時折は、正しい指導を仰ぐ事。これもまた、必要な事である。
(末筆ながら無断で文中出演頂いたO氏、Y氏に感謝申し上げます。)
2004.05.13 Copyright(C)しんのすけ
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