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第7回:テニススクール症候群
毎年のように『異常気象』『空梅雨』『水不足』といった言葉を耳にする昨今にあって、今年の梅雨は珍しく(?)梅雨らしいシッカリとした雨の続く梅雨である。無論、九州地方を中心に豪雨による犠牲者も多数出ている事実を鑑みると、無責任に感心してばかりもいられない。これ以上誰にも被害の出ない範囲で、必要十分な雨を期待したいものである。
さて、先日、そんな梅雨の合間の天気の日に家の近くにある万博公園(大阪府吹田市:万国博記念公園)までせっせと自転車を漕いで行って来た。目的は、万博公園のテニスコートで平均月1回行われている通称『万博マンスリー(正式名称は知りません…f^_^;)』を見に行く為である。世の(主に)主婦プレーヤーの女性諸氏がどのようなプレーをしているのか、その実態に鋭いメスを入れ…と言うほど大層なものではないが、ちょっと現場を見てみたかったからである。
万博マンスリーは定期的に行われる試合としてはこの辺りではそこそこのレベルであるらしく、また参加者が結構多いのも特徴らしい。聞くところによると、最近はエントリーする為の前抽選まであるらしく、参加したくてもなかなか当たらないほどの人気だとか(情報提供:H田さん)。それだけ人が集まる試合なら、それなりにレベルも高いのだろうと思って期待して行って来たのだが…。まあ、とにかく皆さん、テニスを楽しんでおられたのは確かである。
ここで、表現を婉曲的にしたのは何故か? どうして『レベルが高い』と言い切れなかったのか? その理由を色々と考えながら見ていて、ふとどのコートでも見られたある事に気付いた。
まず、チャンスがなかなかない。そして、ようやく回って来たチャンスになかなか決められない。この2点がどうにも引っ掛かったのである。
その元となる理由について、一つ一つの技術にそれぞれ思い当たる節はあったが、その中でも今回は、ボレーの処理を題材に『テニススクール症候群』について考えてみたい。
この『テニススクール症候群』とは、『スクールで習っているので上手だしキレイなフォームなんだけど、実戦になると弱い』という状態を指す、塾長が勝手に名付けた造語であり、当然ながら正式な病名/名称ではない。だが、自分では割合良い所を突いていると自賛している『症例』である。
自身テニススクールで習っていた事も教えていた事もある塾長としては、なんだか自己批判しているようで言いにくいのだが、テニススクールのテニスは、本来試合ではあまり役に立たない。
『そんな身も蓋もない…』
と思うだろうが、事実、そうなのだ。勿論、役に立つように気遣ってレッスンしているコーチも中にはいるが、私の知る限り、多くのコーチが『基本通りで美しいテニス』を教えるばかりで、『勝てるテニス』を教えてくれる事は少ないようである。(※塾長が近畿圏二十数ヶ所のテニススクールを見て回った個人的感想ではあるが。)
試合では、『基本に忠実でキレイ』であるからと言って勝てるとは限らない。むしろ、プロの試合などを見ている限り基本通りに美しいフォームで打てる事はまれで、追い込まれてバランスを崩しながらも打てたというシチュエーションの方が多いように思う。物凄いスピードで展開するプロのプレーだからかも知れないが、見ている限り『毎回丁寧に打つ』というよりも『取り敢えず打ち方云々よりも厳しい場所に打つ』という感じだ。
『ちょっと違う』と感じる方もいるとは思うが、敢えて喩えるとスクールのテニスは『温室育ちの観賞用植物』とか『通信教育の空手』みたいなものではないかと思うのである。温室で大事に育てられた観賞用植物は外に出ると途端に病害虫の被害に遭い、枯れてしまう。また、いくら通信教育で空手2段を取得しても、裏通りで喧嘩三昧して来た無段無級の『や』の付く自由業の方々には恐らく敵うまい。テニススクール出身の選手には、どうもこんな感じで『上手そうなんだけど、試合では思いのほか勝てない』という、『テニススクール症候群』の患者さんが多いように思う。
実戦では、思わぬ技術が必要となるものである。例えば、私自身よくやってしまうのだが、前衛にいてポーチを狙って飛び出したはいいが、相手後衛のストロークが思いのほかストレート寄りだった為に出過ぎてしまう事がある。そんな時には逆手になりながらソフトタッチのドロップショットを逆クロスに落としたりしてしのぐのだが、もしスクールでのレッスン中に生徒さんがこのようなショットをすれば、恐らく間違いなくコーチに
『おいおい、良く見て動け!』
等と指摘されてしまうだろう。無論、こんなショットの練習をやる事など考えられまい。しかし、実際に試合では必要な技術であり、そんな一見無茶な事をしてでも1ポイントには変わりないのである。
実際、本来は決定的なプレー(もしくはそのきっかけ)となるはずのボレーに注目してみると、万博では多くのプレーヤーが1球1球をとても丁寧に(口汚く言うと馬鹿丁寧に)打っているのが見受けられた。その結果ボレー合戦が無意味に長引き、締まりのない印象を与えていたようなのである。(ま、その分長くラリーが続くので皆さん楽しそうではあったが。)
勿論、『美しいテニス』が悪いとは言わない。同じやるなら、見るに耐えないスウィングよりは思わず溜め息の出るようなプレーの方がいい。しかし、例えば万博で勝つ事を目的にプレーしている人にとって、そんなテニスばかりの指導が果たして適切かと言えば、答は『NO』であろう。
コーチとして業を行う以上、顧客(生徒さん)のニーズに適切に対処して、処方するのも腕の見せ所だと思う。勿論、そんな顧客に媚びるような事ばかりしていてもいけない。ある時には顧客の期待を裏切ってでも、結果的に顧客の為になるような道を選ぶのも必要な選択肢であるし、その事に対する説明責任を果たす事も、コーチに求められる技量だと思う。それらの事も含めて考えても、今のテニススクールのあり方は、どうかと思った。これが、観戦した結果の正直な感想である。
『誌上レッスン』でも書いた通り、私は予告して書くのが苦手だ。その時々で書きたい事を書かせて頂いている。だから敢えて予告はしないが、いずれ誌上レッスンのページでもこの事を踏まえた新しい練習方法などを考えて、書き込んでいきたいと考えている。
2003.7.22 Copyright(C)しんのすけ
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