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第3回:『テニス指南書』について
今回は、巷間に広くある『テニス指南書』について論じてみたい。
実は、このサイトを作るに当たって私は自己の理論の検証の為に数冊の『テニス関連書』を購入した。(とは言えあまり費用をかけるのも莫迦らしいので、全て古本屋での仕入れであったが。)
それらは日本及び海外で名の売れた有名選手や有名コーチの書物だったが、それを読んでいて、ある事に気付いた。昔から私は何度もこの事を書いたり言ったりしているので古くから付き合いのある方々には食傷気味かも知れないが、彼ら有名コーチなり選手なりは『生徒は全員言った通りの事をすぐ出来る』と思っているらしいのだ。
勿論、多くの人がいずれは出来るようになるのだが、それにはMan to man(1対1)の個別指導が欠かせない。何故なら、個々の技術は癖や性格と言った個性により多分に影響されるため、それらを総合的に踏まえて指導しなければ折角の指導も生きて来ないからだ。
著作権の問題があるためここでは具体的な記述内容には触れられないが、数々の有名選手を育てた事で著名なバンダミーヤ(Dennis Van der Meer)氏の著書の場合、個々の技術に関する矯正法を列挙した著書の中で『この欠点はこうやって矯正すれば治る』という記事を書いている。それを見ていると、確かにある程度技術的に確立した選手の場合は全員この矯正法で治ると思えたのだが、同時に私に思い当たる複数の生徒さんの場合この矯正方はむしろ逆効果になる事が明らかだった。
あまりに漠然とした話だとピンと来ないかも知れないので、もう少し具体的に言おう。
例えば初心者もしくは初級者で、『球を飛ばす』という事にとらわれる余り手首をこねたりラケットを振り回す生徒さんがいたとしよう。もしもこの生徒さんがこれらの本を読んだとしたら、
『どうすれば手首をこねずに打てるのか?』
『ラケットを振り回さないようにするにはどうすればいいのか?』
という結論だけをイキナリ手に入れてしまい、最も基本的な
『なぜ手首をこねてはいけないのか?(=なぜ今の自分のやり方では駄目なのか?)』
という事実には気付かないまま経験を重ね、結果的に悪い癖やフォームが定着してしまうのである(定着した悪癖は矯正がと〜っても難しいのですよ…)。
もしこの生徒さんにある程度実力があり、どうやって球を飛ばすのか、何故手首をこねてはいけないのかと言った知識とそれを体感できるだけの経験(実力)があるなら、確かにこの本を読めば矯正できると思う。しかし、そんな人がこれらの本を読む必要が本当にあるのだろうか?読まなくてもいずれ気付くだろうし、気付かなくてもそこまで上り詰められたのなら十分な気もする。僅かに『才能に溢れたジュニア選手で今後もまだまだ伸びるはずだがやはり経験不足だしおまけに身近に優秀なコーチがいない』というような読者には大受けするだろうが…。
私なら、こんな生徒さんに出会ったらまず『どうすれば球が飛ぶのか』『球を飛ばすにはどれぐらいの力が必要なのか』といった基礎的な事をシッカリと理解してもらう事に努める。その上で、矯正する必要があれば矯正する。
例え手首をこねていても、手首を傷めるような使い方でなくまたレベル的に問題ない場合は、その事実を告げた上で矯正するなりしないなり好きなように選択してもらう。一見『変』な打ち方もその人の『個性』だし、本人がそれで満足しているのなら無理に矯正を強制する事もない、というのが塾長のポリシーだからである。
皆さんも、こんな指南書や、指南書のようなコーチに引っ掛かったりしないように気をつけましょう。本当にあなたの事を思っているコーチは『名医』と呼ばれるお医者さんと同じ。十分に説明し、あなたが納得した上であなたに最適な処方箋を書いてくれるはずです。そんなコーチに出会って、楽しいテニスを続けられる事をお祈り申し上げます。
さて、前回の文末に『次回以降、この※コラム欄において、その考え方とアドバイスを思う存分展開していくつもり (※注:現在は『サイト』に訂正済)』と書いたのだが、早くも予定変更である(こう言うのを専門用語で『朝令暮改』と言う…ってどこが専門用語や!?)。
新しく『誌上レッスン』のページを開いたので、実践的なアドバイスはそちらに移転し、このコラムでは主にそれ以外の内容に関して記載して行くつもりである。次回の予定は『失敗を恐れるな』。レッスンにおいて失敗がどのような効果を生むのか、その舞台裏を取り上げてみたい。
2003.2.9 Copyright(C)しんのすけ
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